北海道せたな町の漁港で発生した予期せぬ悲劇
北海道せたな町の久遠漁港で、12月14日朝、養殖業を営む漁業者が大きな被害に直面しました。大切に育てられていた養殖トラウトサーモン約6,600匹が、網いけすの中で一斉に死んでいるのが発見されたのです。
事故の核心:酸素濃度が通常の半分以下に急降下
トラウトサーモンが大量死した原因は、漁港内の海水の酸素濃度が極度に低下したことと特定されています。
- 引き金:沖合にいたマイワシの大群がイルカに追われ、パニック状態で漁港内に逃げ込みました。
- 現場の状況:漁業者が発見した際、いけすの網目にマイワシが大量に刺さっており、いけすの中を泳ぐマイワシもいました。漁港内にはマイワシの死骸も多数浮いていたとのことです。
- 決定的要因:桧山地区水産技術普及指導所せたな支所によると、海水の酸素濃度は通常1L中に10mg前後ですが、14日の漁港内では3~5mgにまで低下していました。この急激な酸欠状態が、トラウトサーモンの命を奪いました。
損失額は「見込み売上2500万円」+「既投入コスト550万円超」
今回の被害は、漁業経営に計り知れない打撃を与えます。
被害にあったトラウトサーモンは、今季5年目の養殖事業で、11月下旬に放流された幼魚(平均570g)が約1kg前後にまで順調に成長していました。
| 損失内訳 | 金額 | 詳細 |
| 見込み売上損失 | 約2,500万円 | 来年5月ごろに水揚げし、見込まれていた売上(ひやま漁協大成支所調べ)。 |
| 既投入コストの損失 | 550万円超 | 今季、すでに幼魚代などで使った金額。このコストも回収不能となります。 |
合計で、事業所は見込み売上と既投入コストを合わせた甚大な経済的損失を被ることになります。
今後の対応
- いけすの撤去:今後は12月22日以降に、いけすを陸に揚げて撤去する予定です。
- 経営再建:漁業者は、この巨額な損失に対し、漁業共済制度などを活用して経営の立て直しを図ることになります。
今回の事故は、自然界の予期せぬ突発的な動きが人間の産業に甚大な被害をもたらした、非常に稀有な事例です。被害に遭われた漁業者の皆様の迅速な再建を願うとともに、今後の再発防止策について引き続き注目していきます。
